○監事監査について
多くの公益法人が27年度決算に係る業務で忙しい時期に当たり、改めて監事監査について考えてみたいと思います。新しい公益法人制度になって、監事の責任が重くなったといわれています。旧民法法人時代は、監事に限らず役員・評議員はいわゆる名誉職で、義理で就任を依頼され、報酬は「お車代」程度という法人が多かったことでしょう。監事監査も、法人の理事・事務局長から事業実施状況や決算の概要について説明を受け、現預金残高や固定資産台帳の確認程度を行い、監査に要する時間は1~2時間、といった話もよく耳にしました。そして、監査報告書も、「事業報告書、計算書類等につき監査の結果、適法かつ適正に表示している」といった程度の内容で、監査の方法や内容、理事の職務執行に関する記載もないものが多かったように思います。いまだにこの程度の内容の監査報告書が少なからずあるようです。
ところが、新制度になって、監事には理事会への出席義務があり、理事の不正行為等について理事会に報告する義務があり、社員総会・評議員会の議案を監査し必要がある場合にはその結果を報告する義務があります。計算書類の監査では、決裁書や総勘定元帳・伝票等のチェックも必要で、当然1~2時間で済むはずもないのです。
かといって、監事監査ですべての書類をチェックすることなど不可能であり、規程等の整備と規程等を遵守する体制の構築を行い、監事監査を効率的に行えるような資料の作成、帳票等の整理が必要です。たとえば、一つの口座を複数の会計区分や科目で使っている揚合にはその内容をまとめた預金管理票が、有価証券が多い法人は有価証券管理票が、決算整理仕訳が多い法人はそれをまとめた資料があると便利です。このような資料の作成は、作成の過程でミスの発見も可能であり、不正の抑制にもつながります。決算の時期は忙しいので、こういった資料は極力期中に準備し、効率的で精度の高い監事監査となるよう工夫をしてみてはいかがでしょうか。
平田久美子税理士事務所 2016/05/31