○法人会計区分を設けないことも可能に
新公益法人制度では、法人運営に必要な費用およびその費用を賄うための収益を、法人会計として区分して表示することが求められるようになりました。しかしながら、わざわざ法人会計を設けなくても、公益目的事業会計の中に管理費として区分すれば十分ではないかという、法人会計区分の省略を求める意見が多くありました。
収益事業等を行う法人は、その利益の50%は公益目的事業のために使用することが法令で義務付けられています。収益事業等を行う法人について法人会計区分を廃止すると、公益目的事業会計に繰り入れた利益が公益法人の運営に必要な経常的経費(管理費)に充てられる可能性があるため、法人会計区分を省略することはできません。
一方、公益目的事業しか行わない法人については、このような問題がないため、法人会計区分を省略することは可能となりました。法人会計区分を作成しない場合には、公益目的事業会計区分内において、事業費と管理費を明確に区分しなければなりません。公益目的事業が一つの場合には、正味財産増減計算書内訳表の作成も省略できることになります。
ここで注意を要するのは、法人会計を作成しない場合には、管理費の財源については管理費相当額の収益とみなすことになるため、法人会計区分がある場合のように、管理費と管理費を賄うための収益の差額としての(合理的な範囲の)黒字が認められなくなるということに留意が必要です。
下表の例では、法人会計を設けていると、収支相償を満たしていることになりますが、法人会計区分をなくすと、収支相償は満たしていないことになります。法人会計区分の省略については、この点をよく考える必要があります。法人会計区分を省略する場合も費用の配賦は必要であり、事務負担の軽減もわずかであることも考え併せると、法人会計区分を省略するという法人はほとんどないのではないかと思います。
公益目的事業会計 | 法人会計 | 合計 | |
収益 | 2,000 | 300 | 2,300 |
事業費 | 2,100 | 2,100 | |
管理費 | 180 | 180 | |
増減差額 | △100 | 120 | 20 |
公益目的事業会計 | |
収益 | 2,300 |
事業費 | 2,100 |
管理費 | 180 |
増減差額 | 20 |
平田久美子税理士事務所 2015/10/28