○収支相償の剰余金の解消期間が1年延長に
内閣府公益認定等委員会「公益法人の会計に関する研究会」から、「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」が平成27年3月に公表されました。小規模法人が多い公益法人にとって、会計面での負担軽減への期待は大きかったのですが、公表されたものは残念な内容だったといわざるを得ません。しかしながら、収支相償を満たすことができなかった場合の剰余金の解消期間が1年延長されたことは、朗報といえるでしょう。
公益社団・財団法人は、公益目的事業において適正な費用を賄う額を超えて収入を得てはならないこととされており、剰余が生じた場合は、原則として翌事業年度での解消が求められています(詳しくは本連載No.3参照)。剰余の額が比較的小さなものであればそれほど問題はありませんが、剰余の額が大きなものになると、その解消は事業計画・予算に反映させる必要があります。しかし、理事会や社員総会・評議員会で剰余の解消計画を十分に議論せず、結果として剰余の解消が進まず、剰余が累積している法人もあるようです。そうなると、行政庁から厳しい指導を受けることになり、最悪の場合は公益認定の取消という事態のもなりかねません。そのような状況の中で、剰余金解消期間の1年延長が示されました。
では、どうすれば剰余金の解消期間は1年延長されるのでしょうか。平成27年4月10日に追加された、内閣府作成の「新たな公益法人制度への移行等に関するよくある質問(FAQ)」の「問Ⅴ-2-⑥」に、以下のように示されています。
- ア:事業報告書の別表A(1)の「第二段階における剰余金の取扱い」欄には、発生した剰余金が翌事業年度における解消計画で適切に費消することができないことについて特別の事情や合理的な理由を示すとともに、剰余金の解消計画立案のための検討スケジュールを具体的に示すことが求められる。
- イ:翌事業年度に翌々事業年度の事業計画を提出する際に、機関決定された剰余金の解消計画を提出し、翌々事業年度において剰余金を解消するまでの具体的な資金使途について説明することが求められる。なお、財政面から計画達成を担保するために、当該剰余に見合う資金について、貸借対照表において特定資産として表示することが必要となる。
- ウ:翌々事業年度の事業報告において、剰余金が解消計画に従って解消されたか否かについて、資金の使い道を説明することが求められる。
一見して、かなりハードルが高く感じられることでしょう。解消期間を1年延長したいなら、それくらい覚悟をもって臨んでくださいということで、毎年安定的に収支相償を満たすための工夫・努力が必要ということです。
平田久美子税理士事務所 2015/09/07