○公益目的事業比率
公益法人の財務3基準の中では、NO.2でご説明した収支相償に比べると公益目的事業比率(50%以上)は抵触することが少ない基準ですが、収益事業・共益事業のウェイトが高い法人にとっては注意を要する基準です。特に、実施する公益事業、収益事業等の事業費の変動幅が大きい法人は、少なくとも半期・四半期単位の収支管理が必要です。
公益目的事業比率50%以上を安定的にクリアするためには、①各事業に共通して発生する費用をどのように配賦するか、②特定費用準備資金の活用、③みなし費用の活用、などのポイントがあります。②の特定費用準備資金はNO.2のとおりです。③のみなし費用には、「土地の使用に係る費用」「融資に係る費用」「無償の役務の提供に係る費用」がありますが、あまり一般的ではないため説明は省略します。
①の費用の配賦で重要なことは、まずそれぞれの事業に直課すべき費用を明確にし、その他の共通費用はその性質によって適当と判断した配賦基準(従事割合、使用割合、建物面積比など)を採用し、過去のデータ等に基づいた合理的と考えられる配賦割合を決め、その配賦基準・配賦割合を特段の理由がなければ継続的に使用することが求められます。行政庁へ提出する事業報告等の別表F(1),F(2)の審査では、共通費用の科目や配賦基準・配賦割合が移行認定申請や前年度の事業報告等と比較して変動していると、その理由の照会を受けることがあります。また、原則として3年に一度の立入検査では、配賦割合等の算定根拠の提出を求められることがあります。収支相償や公益目的事業費率の基準を満たすために恣意的な費用の配賦をすることを抑える仕組みができているといえます。なお、費用の適正な配賦は法人税等の申告でも重要なことです。
平田久美子税理士事務所 2014/10/22