○遊休財産額の保有制限について
遊休財産額の保有制限とは、流動資産や未利用・低利用の固定資産の保有に一定の上限を設けて、公益事業目的に沿った効率的な資産の利用を促すための法規制です。その上限とは、公益目的事業に係る事業費の1年分相当額です(法人により若干の調整があります)。遊休財産額は、法人の正味財産から以下の控除対象財産を差し引き、控除対象財産に係る負債を足し戻した額になります。
公益社団・財団法人のいわゆる「財務三基準」の中で、遊休財産額の保有制限は抵触するリスクが相対的に小さい基準ですが、注意を要する法人もあります。それは、資産規模に比して公益目的事業費の額が比較的小さな法人や、事業年度によって公益目的事業費の額の変動が大きい法人などです。
他の基準と同様、特定費用準備資金や資産取得資金の活用によって基準をクリアすることもできますが、注意を要するのは流動性の確保です。遊休財産額の保有制限をクリアするために控除対象財産を増やすことは、一方で流動資産や投資有価証券などの換金性の高いその他固定資産の減少を招きます。安定した法人運営を行うには、適正な流動性を確保しておく必要があります。公益目的保有財産としている金融資産の取崩しや、資産取得資金・特定費用準備資金の目的外取崩しも一定の手続きを踏めばできないことではありませんが、安易に行うべきことではありません。
特に、公益移行の際に十分な検討を行わないで控除対象財産を定めた法人は、改めて中長期のシミュレーションを行い、財務三基準を安定的にクリアできるかどうかを確認することをお勧めします。
平田久美子税理士事務所 2015/04/17